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PAACニュース191号:頸部痛のある人への胸椎スラスト・マニピュレーション後の疼痛に対する脳血液動態反応の機能的核磁気共鳴画像:無作為化試験

2019/01/04

      Cheryl L.Sparks,PhD,PT、Wen C.Liu,PhD、Joshua A.Cleland,PhD,PT、Joseph P.Kelly,MSTP、
      Saran Dyer,DPT、James M.Elliot,PhD,PT 著

                                                 訳:栗原輝久

要約
目的:今回の研究の目的は、侵害的な機械刺激に対する反応の際の脳活性化が、偽マニピュレーション(sham maipulation:SM)と比べて、スラスト・マニピュレーション(thrust manipulation:TM)で変化するのか否かを、機能的核磁気共鳴画像による血液酸素化で測定して検証するというものである。
方法:急性、あるいは亜急性の機械的(非外傷性)頸部痛の症状を訴えている24人のボランティア(67%が女性)が資格要件を満たし、参加に同意した。参加者が胸椎へのスラスト・マニピュレーション(TM)を受けるか、偽マニピュレーション(SM)を受けるかについては無作為に割り当てて、TM か SM の前後に身体刺激を受ける一方で、機能的核磁気共鳴画像撮影を受けた。頸部痛のためのマニピュレーションの前後に、11点制の数値式疼痛尺度を使って、頸部痛と機械刺激に関する疼痛強度の割合を決定した。血中酸素量依存性の機能的核磁気共鳴画像によって、機械刺激に対する脳血液動態反応を記録した。
結果:画像から、有意なグループの違いが明らかになったが、マニピュレーション・グループの人には(マニピュレーション後に)島皮質と体性感覚皮質に活性化領域の増大が見られ、偽マニピュレーション・グループの人には中心前回、補足運動野、帯状皮質での活性化領域の増大が見られた(P<.05)。しかし機械刺激や自己報告の頸部痛に関する数値式疼痛尺度におけるグループ間での違いには、統計的な有意性は見られなかった。
結論:今回の研究によって、非外傷性の頸部痛患者の皮質反応は、胸椎のTMと偽比較器(sham comparator)との間で変化するという事を示唆する示唆する予測レベル2bの証拠が得られた。(J Manipulative Physiol Ther 2017;40:625-634)
検索キーワード:核磁気共鳴画像;マニピュレーション;神経科学;疼痛

                     (中略)

        
図3.示指の表皮への侵害刺激に対する閾値 Z<2.3とP<.05 に適合した脳の血中酸素量依存の活性化のグループ平均領域を表している機能的画像、(A)スラスト・マニピュレーション前、(B)スラスト・マニピュレーション後、そして母趾への侵害刺激の際の機能的画像(C)スラスト・マニピュレーション前、(D)スラスト・マニピュレーション後。

        
図4.示指爪上皮(甘皮)への侵害刺激に対する反応として、偽マニピュレーション前(A)と偽マニピュレーション後
(B)の、母指への侵害刺激に対する反応として、偽マニピュレーション前(C)と偽マニピュレーション後(D)の、閾値 Z<2.3 とP<.05 に適合した活性化による脳血液酸素化レベルの群平均領域を表している機能的画像。

        
図5.(A)スラスト・マニピュレーション・グループの島皮質と感覚運動皮質での活性化による脳血液酸素化レベルと
(B)偽マニピュレーション・グループでの帯状皮質と補足運動野の群平均の違いを表している機能的画像。Z<2.3とP<.05。

                    (中略)


  実際の適用
  ●神経画像検査によって、偽マニピュレーションと比較して、マニピュレーション後の侵害的刺激に対する脳の反
   応における定量化できる変化が明らかになった。
  ●皮質活動のこれらの減少は、疼痛体験に関する個々の減少した感覚とは必ずしも相関してはいないが、疼痛は、
   殆ど常に固有の感情的な反応と関係している。
  ●行動上の変化とニューロンの変化の間のこの断絶に関する知識は、臨床業務の中でマニピュレーションをどのよ
   うに行うか、いつ行うのかに関する臨床上の意思決定の改善に役立つだろう。

                    (以下省略)




        



 

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