PAACニュース166号:頸椎の骨軟骨腫:一般的な障害の稀な所見

2018/11/06

                Kenneth E.Reckelhoff,DC、Mayer N.Green,DC、Norman W.Kettner,DC 著

                                             訳:栗原輝久

概観
目的:今回の症例報告では、C4の椎体前部から生じた骨軟骨腫という稀な所見について詳述する。これは、C4の椎体前部から生じた骨軟骨腫の症例に関する初の症例報告である。
臨床的特徴:24歳の男性は、頸部痛のために係りつけの医師の診察を求めた。その後、この患者は、カイロプラクティックの評価と治療のために、頸椎のレントゲン撮影へと照会された。C4椎体から生じた骨病変が明らかになった。骨軟骨腫が疑われたが、軟骨肉腫を除外できなかった。整形外科的な診察の後に、主訴(頸部痛)に付随して起こりうる病変を伴った骨軟骨腫が確定診断をなった。
処置と結果:この患者は、8週間に12回のカイロプラクティック治療を受けた。これには、胸椎や頸椎への素早く振幅の小さな脊椎マニピュレーション、干渉電流、超音波治療、ストレッチング、脊柱傍筋のエクササイズ治療が含まれていた。再評価によって、この患者は、仕事上の負荷、日常生活動作によっても無痛である事、睡眠の質も改善された事が判った。彼は、自宅でのストレッチと胸椎と頸椎の脊柱傍筋の対象とした強化訓練の指導を受けて退院した。6ヶ月目の追跡調査でも、症状の再発はみられなかった。
結論:我々は、C4椎体前部から生じた骨軟骨腫に関する初めての症例について詳述した。臨床的な評価、鑑別診断、画像による精密検査、治療について取り組んでいる。また今回の症例では、無症状の頸椎の頸椎の骨軟骨腫は適応症なのかもしれない事、そして素早く振幅の小さな脊椎マニピュレーションが絶対禁忌とはならない事も実証している。(J Manipulative Physiol Ther 2010;33:711-715)
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 臨床的適用
 ●脊椎の骨軟骨腫は稀な良性腫瘍で、先進的な画像による検査が必要である。
 ●ドクターは、良性の骨新生物の悪性形質転換の臨床症状を認識していなければならない。

   
 図1.中立位でのレントゲン側面像、C4の椎体前部から  図2.T2強調のMRI矢状断画像所見。T2の高信号を伴っ 
 生じた軟骨基質を含む広範な外骨腫症が明らかになっ   た左傍矢状部位での前方への骨隆起が見られる。これ
 ている。C4の前下部での微妙な骨皮質の断裂が示唆さ      は、軟骨帽を表している。T2での高信号は、硝子軟骨
 れている。C3C4の椎骨前部の軟部組織の僅かな変位が     (ヒアリン軟骨)の特徴である。此処でも椎前の軟部
 見られる。                                                               組織の腫脹が認められる。またC6C7での椎間板ヘル
                                ニアも認められる。

   
 図3.T2強調の軸方向のMRI画像。傍矢状部位に有茎性  図4.T1協調の軸方向のMRI画像、軟骨腫(黒い矢じ
 の外骨腫症が見られる。傍脊椎前部に腫瘤効果が存在      り印)からは中間の信号強度に戻っている。
 する。骨軟骨腫の髄質は、宿主である椎体へと続いて
 いる。これは、骨軟骨腫の特徴的所見である。硝子軟
 骨帽(黒い矢じり印)には、明確なT2の高信号が見ら
 れる。これが重要な診断上の特徴である。硝子軟骨腫
 は、8.0mmだと測定された。2.0 cmを越えるもので
 は、悪性形質転換の疑いが持たれる。

 
 図5.T1強調の軸方向の脂肪抑制MRI画像。コントラスト
 促進により、軟骨帽(黒い矢じり印)の瀰漫性の増強が
 明らかになった。骨軟骨腫の硝子軟骨帽の僅かな増強は
 稀では無い。しかし今回の症例で見られるような均一で
 瀰漫性の増強では、悪性変性が懸念される。此処でも識
 別診断は、骨軟骨腫と軟骨肉腫である。極く僅かな右方
 への気管変位が見られる。

 臨床的適用
 ●脊椎の骨軟骨腫は稀な良性腫瘍で、先進的な画像による検査が必要である。
 ●ドクターは、良性の骨軟骨腫は骨新生物の悪性形質転換の臨床症状を認識していなければならない。

 (以下省略)

 

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